<Frankfurt Book Fair>
三年ぶりのフェアです。それも天下の(笑)フランクフルトブックフェアー。今年は10月4−9日。一度個人的に行ってみたいなあ、と思っていたりもしたのですが、呼ばれていくことなろうとはでした。広大な敷地の中で開かれる世界一でっかい本の見本市です。
  目的は、ブックフェアーCOMICセクションと、ドイツの出版社Ephapa(この子会社…というのか、漫画部門が独立したEMAという会社になっていて私はそこにかかわってます)の共同企画"East Meets West", Co-Mangaというものに漫画側の代表として参加すること。コミック側はやはりEphapaのコミック部門から本を出しているZoranというコミック作家。

事の詳細はブログの「お仕事」セクションにつづってありますので、お暇な方は読んでください。紆余曲折あって私が七転八倒(というより七転罵倒かも)している様が笑えると思います。つどつど綴っているので、まとまっていなくて読みにくいかと思うけど(時間逆順になってるし) 日本人カルチャーショックを受けるってなノリで。

フェア自体は水曜−日曜なのですが、一般公開は土日。ウィークディーは出版社の商取引の場だったりするわけです。で、我々作家さんたちは土曜イベントだったのですが、前日の打ち合わせt準備があるので、木曜入国で月曜出国。一日くらい余分とってくれるんかなあと思っていたけど、甘かったのでした。仕事終わったらさっさと帰れって事だった(笑)
 5日

到着

さて、出発一週間暗い前になって母親がタクシーにぶつけられるアクシデント。オシリにあざくらいですみましたが、留守中に猫の世話をしにアパートに来てもらうことになっていたので可なり焦りました(階段があるしね) 

そのうえ現地で原稿描きながら(ホテルで一枚描かなきゃならない状況だったんですよ。詳細はブログをどうぞ)聴こうとおもっていたギガビートがいう事をきかなくなりまして。サポートセンターに問い合わせたらフォーマットしなおせとのこと。仕方ないからまっさらにして、データを入れなおしたら余計おかしくなって、二度目のフォーマットで本格的に壊れた。買ってから1年と1ヶ月半の命でした。ちぇっ。そんなことしていて出発前々日に徹夜。やばい…。

オマケに父親は熱を出すし(同居じゃないけどすぐ傍に住んでるのです)、疲れた体に、妙な喉の痛みを感じるような…。向こうで倒れることだけは何があっても断じて出来ないわけで、うがい薬とマスクを買いに。喉の乾燥からえらい目にあったことがあるんで。

で、出発。今回はルフトハンザでした。例によって寝ないで朝一番のバスで空港に。ブックフェアの招待だから、一寸期待していたのですがエコノミーだった。帰りの機内で乗り合わせたサラリーマンが(ブックフェアで混んでいて)ビジネスが取れなかったといっていたが、なにせ航空券だけは早々と6月に送られてきたのであるからして、そういうことはないだろうとおもうが…

しかしルフトハンザ、今回初めてでしたが、食事あんまりよくないですね。塩辛い。ま、これはドイツ料理全般に言えることなんだけど…。機体も旧型でパーソナルビデオではなくてTVがところどころに吊るさってるタイプでした。ま、今回は金曜日の打ち合わせ用のアイディアを機内ででっち上げなきゃならなかったから映画なんか見ている暇はなかったので、関係なかったけどね。電子辞書片手にねた作りでした。

さて、2時半定刻に空港について、すでに到着していた、相方のゾランと合流。もう一人拾う人がいるからと、カフェで待たされる。ゾランとは4年前のエアランゲンで一度話したことがある程度の間柄だったんですが、民族ですかねー、フレンドリーというか。ヤッホーといってハグして雑談。彼は可なり早くから到着していて待っていたらしいのだが、そんなことは気にしていないようだった。この「屈託のなさ」というのかな、後で10倍くらいになってアダとなることになるんだけど(笑)

しかしながら、どうやら最後の待ち人の到着の飛行機が遅れているらしく、「先に行っていてください」と、二人の女性と共に広い空港を駐車場までトコトコあるいた。「ヨーロッパ一でかい空港だからねー」とゾラン。うーん、4年前もこの空港で車でお出迎えしてもらったんだけどこんなに歩かなかったなあ…。で、この送迎をしてくれるお姉さん方は、我々をどこで下ろすのか知らされていなかった。ブックフェアーというのはひたすらでかくって、展示ホールがいくつもあるので、何番ホールに行けばいいのか、とこっちに聞いてくるんである。「コミック館」ではわからなくて、メールで事前に貰っていたスケジュール表を引っ張り出してホールNo.を確認。

そしたらそのホールの入り口まで車で乗り付けて「じゃあねー」。旅行かばんを手において行かれてしまったのでした。スケジュールによるとEphapaのブースで出版社側のスタッフと面あわせする、となっているので、とりあえずブースに行こうと建物の中に。番号を探しながら(まるでコミケだ)ブースに到着。しかし誰も待っていなかった。受付のスタッフに「ゾランと谷沢が来たよ」というと「お約束はありますか?どなたに御用ですか?」…そりゃお約束はあるさ、呼ばれてきたんだもん。あのさ、大体何時ごろに来るって分かっているんだから、せめて受付に座るやつには一言話し通しておかないかい?(しかしこんなことで驚いていてはここではやっていけないのが後で分かる)

「ゲオルク(漫画チームのボス)かレクサ(この企画の担当者)を…」とか言ってるうちに知ってる顔の人が来て、「やー、ひさしぶり!」ってことで一件落着。ってーか、担当の方々も、すぐ傍でうろうろしていた。そこで「通訳」の女子大生Miyuki(お母さんが日本人なのだそうな)に紹介される。ケルンの漫画チームのオフィスでアルバイトをしている子とのこと。「通訳なんていわれているけど、初めてなので…」

天下のブックフェアではあったが、COMIC部門は「天下の」からは外れていたのか、本職の通訳さんはいなかった。うーん、その言葉が喋れるだけで出来るほど、通訳って簡単な仕事じゃないんだけどなあ…。それにしてもEMAは「日本の漫画専門」なんだから、そこで働いている翻訳者とかは…高くて使えないのか?(そこで働いている翻訳者さんのクォリティーにも一寸疑問があるんだけど。以前「越谷」をEtsugaya、茅ヶ崎をAnegasaki、早乙女を何故だかOtomeとやられたことがあった(どうも「あだ名」と混同した節がある)。…これは翻訳のスキル以前の問題だけどさ)


その日は別にすることもないので(こっちとしては多少アイディアの話とかしたかったんだけど向こうにまったくその気なし。どうせ小心者ですよ・笑)「ディナーの時間までホテルでお休みします?」とかいわれたが、グズグズしていて、ホテルについたときには30分くらいしか余裕がなかった。はじめは「船上ホテル」とか言われていたのだが、結局近場のIbisホテルに。シンプルなビジネスホテルだが、シンプルすぎて部屋にドライヤーもなし。電話の使い方とか何とか、そういう説明もなかった。フロント何番くらい表示しといてくれてもいいのに。オマケに時計が部屋にないのだよ。マジかい。よってアラームも無いけどモーニングコールも無い(多分無い。とにかく説明が無いんだから分からん)。こんなホテルは初めてだ。

ディナーはイタリアンレストラン。ここはのんびりしているのか、忙しかったのか知らないが(にぎやかだったけど)料理が出てくるのが遅くて、コースとコースの間隔もひどくあいていて、8時からの夕食だったけど食べ終わった時にはとっくに10時過ぎていたんでした。ホテルに帰ったら11時。翌日は9時半から打ち合わせ…。ってなことで忙しくて寝不足なブックフェアーが始まったんでした。

ちなみに滞在中は場所は違えど夕食は全てイタリアンだった。とにかくドイツ人はイタリアンが好きだ。ま、確かに大抵おいしいんである。時々塩辛いメニューもあるのはさすがドイツということなのだが(一度ハズレメニューを引いてしまった) 彼らに言わせると、イタリアンなら必ず誰でも食べられるものがあって無難なのだそうな。確かにそうかもね。完全なベジタリアンでも何か食べられるメニューはある。

 6日 9時半からブックフェアーコミックセンター(企画主催者)とEMA/Ephapaの担当編集者との打ち合わせ。(しかし一人の名刺にはマーケティング担当とあった。??マーケティング担当者もクリエイティヴな部門に携わるらしい。…もっともドイツの編集者というのは日本のそれのように細かくないように口を出すことは無いようだ。…まあ、今回の企画は一寸色合いが違うということもあるんだろうけれど、何を言っても|Good! Great! Fantastic! I'm proud!」とかいってくるだけなので、どうも、ネタの段階からあまりに手ごたえが無さ過ぎて恐いような…

朝一番で会場入り。会場があまりに広くいせいか、Comic Centerに連れて行ってくれる主催者が迷った(笑) 会場をぐるっ遠回りしてコミックセンターという催し物上のようなところに到着。各出版社で招いた作家のパネルディスカッションやサイン会がここで行われるということらしい。小さな舞台とその前のスペースにクッション椅子(っての?エアチェアーというのかな、空気はいってるやつみたいだった)やベンチがおかれていて、客は勝手に座る。通路に座る人もいるし、立ち見の人も(立ち見は圧倒的な交通妨害…!)

さて、肝心のミーティング。

企画の肝、コミックとマンガが出会って、それでどうなるかは全く白紙のままフランクフルト入りした作家二人。本とは打ち合わせしてある程度まとめておくはずだったんだけどねー…(Co-mangaの出来るまで参照

ゾランは「何も考えてないよ」とニコニコ(笑ってる場合か、コラ) 「なんだかわけの分からないものにしたいね、沢山のキャラクターが見開き一杯にいて…」(そんなの書いている時間がないから最後の一コマだけライブでってことにしたんでしょうが)「ハリウッド映画の終わり見たいに画面いっぱいに夕日と海の絵で終わったら?宇宙でもいいかな」(?????? Manga meets Comicってテーマはどこにいったんじゃい?)

彼の側だってソレまでにそれなりのお話があったりしているのにソレはまったく無視!(何でもコミックフローが起こってコミックのキャラが本を飛び出して現実の人間にちょっかいを出し始めている。で、実害があるわけではないが、このままではコミックを読む人がいなくなってコミックが消滅してしまう。主人公はソレを防ぐべくコミックフェア会場に出現して…で、防げるのか、どうなるのか、って所読者は気にしてるでしょ?)読者に対していいのかなあ…?

それなりに「出会って」、出会った結果「何かがあって」という常識意的(?)な事に頭を絞っていた私はとても困ってしまったのでした。回りの編集者たちも「なるほどー!」みたいな感じだし。でもこっちが別の視点を言ってもやっぱり「なるほどー」なんだよねえ。どっちなんだよ?

結局、ラストのコマで、コミックとマンガがスイッチして、マンガキャラがコミックタッチに、コミックキャラがマンガタッチになることで落ち着きまして。で、「とにかくお互いがお互いを認識しなきゃ始まらないから」と、目線を交わすコマをページの真ん中に(「ノド」といいます、業界用語で)入れたい、というコレだけは頑固に主張しました。だって「会った」ことにならないんだもん。で、キャラが入れ替わるのではなくて、描き手が入れ替わる、つまり私がゾランの最後のページにゾランのキャラをマンガタッチに描く、その逆を彼が、ということで決着。みんな「いいね、いいね」というんだけど、どうも何を言っても「いいねー」みたいなんで、どうも手ごたえが無くて不安。コレが褒めて伸ばす西洋式なのか?(笑)

やれやれ、決着した、と思ったら、「紙のサイズが…」と言い出した。だって事前にB4のサイズの画稿用紙を持っていってもいいか、って聞いたらいいって言ったじゃん!でもって、通訳してくれるハーフの女の子がいたのだけれど、彼女はただの大学生で、印刷のこともデザインのことも何にも知らない(日本語も、まあ日常会話の上級レベル)。A4,B4が紙のサイズだということも分からなくて、どうにも話がかみ合わない…おお。どうやら、よく話してみたら主催者も印刷のことは分からないらしい。じゃあ分かるヤツを出せよ〜!

A4サイズでないと印刷機に入らないというのだ。この印刷機に入らないという表現も良く分からない。スキャナが対応しないということではないかと思うのだけど、言ってる当人にも分からないのだから(人から聞いたことを繰り返しているだけなので)埒明かない。で、カットしてもらっていいですから、といったら「正確にはカットできないから機械には入れられないです」だったのだけど、話しているうちに「切ってもいいなら大丈夫です」。???

この間の会話が英語だったらこちらも多少は流れが掴めるのだけど、ドイツ語。どうも、英語も話すことは話すけど、イマイチ辛いらしい。

結局A4にカットするのだからと、ちょっとサイズを変えて、A4の寸法にきっちり収まるように書いたら、結局原稿はカットされなくて(この辺ちゃんと伝わらなかったんじゃないかなー。あるいは、主催者がまったく理解していなかったか…)おかげで描いたサイズが印刷サイズよりも少なくて白いところが出てしまっていた。おお、やれやれ。

とはいえ、こんなこと屁でもないぜ、と思われるようなことがライブで起こったんである。すげえぜユーゴ人。(ボスニアだったかなあ、彼…どこだか忘れちゃった) ま、ドイツ人も似たり寄ったりかもだけどね〜。


この日はミーティングの後、11時半からと3時からの2回のサイン会がスケジュールに入っていた。コミックセンターではなくて出版社のブースで。一般客が入ってくるのは明日、土曜日からのはず、今会場には入れているのは企業関係者だけのはずなのに?と思ったけどとりあえず座る。ブース前にはCo-mangaの立て看と、サイン会スケジュールの告知。


結構並んでいたんでした。おまけに中学生位の子供まで。多分関係者に何かコネがあって肺って凝れたんだと思うけれど、ドイツの学校がいかに勉強をさせないとはいえ、確か午前中は授業があったはず。11時半からのサイン会に来ていた子供は何だったのか…。そうはいっても、さすがに一般客は入ってこれない事になっているので、、ホントの谷沢ファン、ピーチファンはそれほど多くない。

立派な大人、「なにやら漫画家のサインがもらえるらしいから子供に貰って行ってやろう」てなノリで、誰のサインを貰っているのかも判らず来ていた人も結構いた(中には「子供があなたのファンで」といって、私の本を持ってきてくれた有り難いお「お方々」もいらっしゃいましたが)
 「息子が日本のアニメファンだから、何かアニメっぽい男の子を描いてくれ」とか、Co-mangaの宣伝パネルに出ていた私の自画像を見て失礼千番にも(笑)「こういう男の子を描いて」といってきたオジサンもいた。ちゃんと描いてあげましたけどね。

さすがに一般客がいないため、そう大勢は来ていなくて結構のんびりしたサイン会だったんでした。ちょっとエアランゲンのコミックサロンのノリに似ているかな。遠慮がちに「もう一枚いいですか?」なんて人にも対応できる余裕(次の日は「字だけにして、字だけにして、」の世界だったのに)

サイン会の合間にはケータリングサービスのフランクフルトソーセージ(多分フランクフルターだったと思う)を食べて、アニメマガジンのインタビューを受けた。2回目のサイン会はさらにまったり結ったりで、ブースの社員たちも誰も仕切ろうとせず、何となく「客がいなくなったから」原稿用紙を取り出して明日のライブ前に仕上げる部分の作画に入る。編集さんは覘きに来て「やってるね〜!」 ゾランは私が描いているのを尻目に、マンガ、コミックグッズをあさりに行ってしまった(知り合いの編集者から色々貰ってくるんである)


この日はブースでケルンビールパーティーが5時からあった。本社はベルリンなのだが、コミック・マンガ部門はケルンにあるので、ケルンビール。独特の細長いグラスに入ったビール。繊細な香りを逃さないためのグラスなのだそうだ。日本いは入っていないはずとの事。確かに聞いたことはない。すっきりとしてほのかに甘く、飲みやすいビールだった。プレッツェルをつまみに、原稿を描きながら2杯いただきました。この後8時からまたディナーだったし…・でも、原稿がなかったらもっと飲んでたな。

このビールパーティー、どういうわけだか去年から私にエアメールで出欠確認が来る。欠席、出席、友達を連れて出席のどれかにチェックをつけて期日までにファックスで送ってくれというものだ。去年貰った時は笑ったが(日本から自費ケルンビールを飲みにドイツまで行くわけがなかろう)、今年は返信しそびれてしまった。…が、会場では出欠のチェックなんか一切していなかった。通りがかった人もビールを貰っていたくらい。あとで社員にその話をしたら大笑いしていた(彼らはそんなものが送られていることを知らなかったのだ)


ディナーはもちろんイタリアン。「今日はどこそこで食べるように」という指示書(?)が出ているのだが、誰もレストランの場所を知らないのでホテルからタクシーで行ったら、ブックフェア会場の隣だった。ホテルに戻らなくても良かったじゃん。

この日はワインも控えめにして、ホテルに帰って早速お仕事。一眠りして早起きしてやろうかな、と思ったけど、仕上がらなかったら怖いので(小心者)シャワーでしゃきっとしてから机に向かったのでした。そしたら未開封で持っていたインクが分離して固まっていて、液体部分が薄墨状態。いや〜な予感だ。結局仕上がったら朝の4時でした。翌朝は11時イベント始まりなのでギリギリまで寝ていて良かったんだけど、体のリズムのために朝の8時には目が覚めてしまうのでした。(日本時間の午後2時)いつも規則正しい昼夜逆転生活をしているせいだ(笑)
 7日

さて、ライブ当日。ここはブログにしっかり書いたので転載します。ブログによると…

その1
前日、というか当日の朝4時ごろまでかかって、ラスト一こまを除いた部分を完成させた原稿と道具一式を抱えて会場に。

未開封で持っていったインクが何と分離していて、墨の色が薄くなってしまったという不吉な出だしに始まって、会場入りの直前に入場券を忘れたことに気が付き、通訳の女の子に当日券を恵んでもらい、と、嫌な前兆が次々に(ま、彼女が余分な「当日券」を持っていたというのはある意味ラッキーだったけど)。

ライブ会場はComicセンターという、いわば大きなブースで、小さな舞台とその回りに小規模な客席(30人座れたかな…?)。余ったお客は隙間や後ろに立ち見。場合によっては当然(?) 通路にあふれて交通の妨げになる。

余談だけど、それぞれのブースで出版社に招かれた作家とか映画俳優とかがサイン会だのトークだのしていて、ソレが特に席だの列のスペースだの用意されていないものだから観客は通路に並んだり立ち止まったり。あちこちに渋滞が出来る羽目になる。会場側、あるいは出版社側で整理をしようという気は…無いらしい。

でもって、舞台に上がる前に出来上がった原稿を見せたりして最後の打ち合わせ。お互いに最後のイラストを描くわけだけど、相手のキャラの感情が分からないと描けないから、「どういう気持ちでいると思う?」などなど確認。ラスト原稿をスイッチして描くことを最後の駄目押し。・・・だってゾランの原稿が見当たらないんだよ。いや〜な予感が…(昨夜はTV見て寝たっていうし)

で、舞台。客は座ったり立ったりで、こっちを観ている。舞台の端にながテーブルが置いてあって、そこに作家ふたりちんまり座って描くわけだ。中央にはセンターの主催者と、出版社のマンガ部門チーフとCo-mangaの担当、それに通訳の女の子が並んで座る。作家の紹介を簡単にした後、主催者がなにやらドイツ語でしゃべっている。…そこで分かったのが(やっぱり)ゾランは何も描いていなかったということ。真っ白なんである。おまけに「Nao、ペンシル持ってる?僕コレしか(ロットリング=製図ペン一本)持ってこなかったんだ〜」 あまりの屈託の無さにシャーペンを渡してしまったが、私だって自分用1本しか持ってない(そんなもの何本も持ってくる余裕があったら他のもの持つよ)


「さっさと描いちゃうからね」っておい。私が約束されていた1時間(正味40分弱)は、儚くもクソッタレにもものの見事にFuck upしてしまったんでした。ソレでなくてもコミックよりもマンガは時間がかかるっていうのに、コレじゃ15分…10分?出来るわけね−じゃん!そんな状況だというのに、横に座っているえらい方々は涼しい顔で(多分)「Co−mangaの意義について」みたいなことをドイツ語でしゃべったりしているのだ。彼は悠々と描きながら、「Nao、コレ面白いだろ?こんなのどう?」な〜んて言ってくる。いいから早く描けよ、こっちが待ってるのみえてんだろーが!(声に出しては言わないけど) なにしろ悪いことしたなんて、かけらも思っていないんだから処置なし。で、見てたら前日打ち合わせで決めた「互いのキャラが目を合わせるカットをノド側に入れる」というのを完全に無視した。おい!

コレばっかりは黙ってみてはいられない、なにしろこっちの原稿には左側(コミックサイド)に目線をやって「!」ってキャラのコマがあるんだ。そっちに無視されたら意味を成さなくなっちゃうじゃんか!と、慌てて指摘。もー慌てているので英語もなんだかとってもブロークンである(笑)。「彼女を見てくれよ!」といったら「大丈夫だよ、こっちのページで彼女に気が付いたことにすればいいんだよ」って、バカ、その段階ではこっちのキャラはまだあんたのキャラと同じ空間には届いていないんだって!(意味分かるかなー) 第一ここにコマ描いちゃってあるのに!「あ、そっかー。じゃあ消しゴム貸して」恐るべしComic作家、彼はこの段階まで消しゴムを一切使っていなかったのだ。技術は格段に敵が上だ(笑) おまけにベタもホワイトもトーンもしないから、4倍くらい手が速くなるわけだ。

ゾランはお仕事、私はすることが無い。カメラはゾランの手元しか写さないから、観客は谷沢(私)はなにやってるんだか、どうして描かないのか、さっぱりわからない。(どちらかというと、ComicよりMangaを見に来た客の方が多いのだ。私のファンということではないけどね) さすがに客もざわめきだす…の状態はさすがにヤバイと思ったのか、状況の説明をして(そこまで何もしていなかってってのが凄いでしょ。天下のフランクフルトブックフェアーだぞ)、その後「インタビュー」を始めた。コレは描きながら受けるはずだったのじゃないかと思うけど、とりあえず時間つぶし。

さてさて、こんな状況で「あがれる」人なんているでしょうか。舞台に上がってる?カメラが横にある?それどこじゃないっす。


その2
インタビューは終わってしまった、(ゾランは描きながらインタビューを受けた。「描きながら出来ますか?」「もちろん!」いいなーこの泰然自若振り。自分じゃ、これっぽっちもそう思っていないだろうけどサ…) ゾランのインタビューが終わってもまだ彼は描いているし、こっちはすることが無い、時間はどんどん無くなる、下手すると私はまったく描かないで終わってしまう可能性も…で、無い頭をまたも絞って、結局「お互いのキャラがページを飛び越えて相手の原稿に入ってしまった」という設定にした。これも我がパートナーから「Good Idea!」のお出迎えを受けたのは言うまでも無い。やれやれ…。

さて、またもや席を立って通訳の女の子に(彼女も谷沢のインタビューが終わってしまったので自分の席に戻っていた) 「鉛筆かシャーペンを手に入れてください!」とお願い。この段階でもゾランはまだ下書き中だったのだ。で、なんとかシャーペンを手に入れて猛然と描き始めたわけだけど、なんだか「早描き競争」の出場者みたいになっちまったのでした。あるいはサイン会で客をこなしきれなくなって「急いでくれ」と主催者にせかされてるところか。もう客のことなんて知らん(笑) おまけですが、ゾランは持ってきた製図ペンが詰まっていて描けず、「科学技術さ」と、水性ボールペンでペン入れをした。

結局ゾランが描き終わったのは時間ギリギリ、私はもちろん終わらずじまい。消しゴムまで何とか入れて、残りは事務所に場所を移してホワイト修正とスクリーントーン。そこでふと、ゾランが残していった原稿を見たら(彼は終わったらさっさと、どこかにいってしまった。多分マンガ本をあさりにいったのだろう)、ヤツは消しゴムをかけていなかった。おまけに部分的にペンが入っていないところも。ま、のんびりしているようで、それなりに焦っていたのか、いつもそんなものなのかは知らないけど。で、私が仕上げ作業をしている間通訳のアルバイトの女子大生が、ゾランの原稿にペンを入れ、消しゴムをかけた。さーて、台詞である(ゾランの方は台詞なし)

台詞があるということは前もっていってあったのに、翻訳者はいないのだそうだ。っていうか、事務所には誰一人スタッフは付いて来なかった。通訳のバイトの子(彼女は出版社にやとわれているのであるからして、フェアのことは何一つ知らない)と二人きり。 結局成り行きでバイトの彼女と二人で翻訳作業をする羽目になった。ああだこうだと議論。書けばたった数行の台詞ですが。「こ…ここは」みたいなのを、どうすればいいのか、スペースが少ない部分にどういう台詞を当てはめるか、日本語のニュアンスの説明やら、英語日本語交えての議論である。彼女の日本語の理解力だと、マンガの台詞の行間は読めないらしいので、その説明から…。(彼女は英語の方が得意) ま、「作者と確認しあいながらの翻訳」、これはある意味理想の翻訳形態であったのではないかと思いますが(笑) でもって、PCでタイプして張り込むのかと思ったら「出来ないから書いてください」 おい、日本人の私にドイツ語を書けと?特殊なソフトが無くたって(ワードで十分)タイプして張り込むことは簡単に出来るのに???そこにPCおいてあるじゃん?

翻訳してくれた彼女は手書きにしり込みするので、「誰か(書いてくれる人を)呼んでよ」、と主催者に頼んだら、「一番字の綺麗な人」だと女の子を連れてきた。でもペンは無かった。(ここは事務所…) 私が持っていたのは0.5のミリペンで少し太すぎるだろうと思うのだが、とりあえずそれで何とか字を書いてもらってやれやれ一件落着。…落着したのかなあ? もっと細いペンもあったのだけど、ソレは使いたがらなかった。どうも、前のページの台詞(タイプ…って−か、活字だ、もちろん)の書体の太さと合わなくなるのを気にしたらしい。どうせ手書きなんだから、そんなところで取り繕わなくてもいいのに…。そこでまた、もう一度その書き手さんと、表現について(スペースの問題も絡まって)ああでもない、こうでもない、とひともめ。仕事をした充実感(?)と虚脱感はたっぷり味わいました。ドイツ語で「…」を「ポンポンポン」というのも知った。「そこにポンポンポン」だって。へー。

止めは午後。主催者はにっこり笑って「今うちのスタッフがコピーショップにいって最後のページを印刷しているよ」 …コピーですと??? レーザープリンタ無いの?てっきりスキャンして、PCに取り込んで画像調整をしてレーザープリンタで印刷すると思っていた私はびっくりこいてしまったのでした。10年前の同人誌かよ?? あたしん家だってソレくらい出来るぞ? でもって、コピーだから原稿切るもクソもなくって、原稿は前日に言われたようにA4サイズのカットされることも無く、おかげでA4にあわせて事前に寸法を調整した絵は意図せぬ余白を抱えこむこととなったのでした。A4に固執したあれはなに?おまけにコピーだから印刷はあんまりシャープじゃない。しょーがねーなー…もう。あとで主催者が「サインして」と、使用した原稿を持ってきたけど、もちろんA4サイズになんか切っていなかった。だけどそのことについては一言もなし。忘れちゃってんのかな。

出来上がった原稿の印刷も、そして内容も、「ソレだったらこうも出来た、ああも出来た」と思えるような出来なのだけど、皆さんは例によって(?)「いいね、いいね」を連発。ほんとかよ?

翌日フランクフルトに住んでいる知人とお昼を食べて、その時にその話をしたら「ドイツ人はまあ、おべっかは使わないから、まあ本気だと思うけど」。そうかなあ。ちなみにその人もユーゴ辺り出身(正確にはどこだか忘れてしまいました)の友達がいるとのことだけれど、頓着しないというのは彼女も一緒だそうだ。日本語を教えに彼女の家に通っているのだそうだけど(もちろん無料)、時間に行ってもいないことがしょっちゅうで、家の前で待っていると向こうからやってくる。でも彼女は絶対に急ぎ足になったりはしないのだそうだ。「待たせてごめんなさいね」もありえないらしい。悪気はまったくないんだよね。常識の違いってヤツか…

ゾランが描いていなかったこと、おかげでバタバタになったことに関しては全く何にもなかった。ドイツも同じ常識の中にいるらしい。日本だったら、担当は作家に平身低頭するところ(多分ね)なんだけど…。「いい仕事したね!」っていって喜んで、肩たたいたり抱き合ったりしてお仕舞い。ふふふ・・・。いーけどさ。でもまあ、全体的にいってそれなりには面白かったんですけどね。その辺でイライラしてたらヨーロッパじゃやっていけないんだろうなー。アメリカあたりはどうなんでしょうね?


この日はライブと午後のサイン会の合間に2時間位時間があったので(ホントはもっとあるはずだったのだけど、居残り仕上げだの翻訳だのでバタバタしていたのでね)、遅いお昼を食べてから会場をぶらっと散策。バイト通訳の


さて、ドイツ側の公式サイトにもレポートが出ています。こちらはドイツ語ですが。他にもコスプレの写真とか盛りだくさんなので面白いかと。いやあ、自分の写真は…ははは。さすがに大人(?)になったので、写真から逃げるような無粋な真似はしなくなりましたが、やっぱね。現実を直視しなきゃしょーがないのは分かっているのだが(笑) http://www.comic.de/buchmesse2006/fotos/galerie7.html

Zoranはドイツ語しゃべりませんでしたので、共通語は英語。その辺の話なんかはこっちにもぽちぽち書いていこうと思ってます。イタ飯屋での「汚い言葉」談義とか(いい大人が揃って何をやっているのでしょう)

あと、田辺とおるさんのアニメソングコンサートもありまして(日本の歌「小さい秋」とか「さくら」とかも歌ってました)、そのレポートはこちら。 http://www.comic.de/buchmesse2006/berichte/bericht5.html