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タイトル Dog Soldiers ('02 UK)
Starring Sean Pertwee/Kevin McKidd
Director Neil Marchall

スプラッタホラーのカテゴリになっているけど…ホラーというよりはアクション。"アクション/ホラー"で分類しているところがあるけど、そっちが正解だろう。かなりアクションより。

英国兵士の小隊が、スコットランド(ロケ地はルクセンブルクだそうだが、実にスコットランドぽい)の人里離れた山奥の農家に立てこもって、襲ってくる人狼達と戦う。一人また一人と餌食になっていき、弾丸も残り少なくなり…。「狼男版ゾンビの誕生(Night of The Living Dead)」ってとこでしょーか。「狼男は出てくるが、これは兵士の映画」なのだそうな。

この監督の長編第一作目。かなり低予算で作られたらしい。でもそこらの金を使った大仕掛けのホラー映画よりよほど面白い。英国では大ヒットしたらしいけど…日本ではいまいちだったのか、記憶にない。聞いたような気もするんだが…。(内容に関しては、きっぱり聞いた記憶なし)

スプラッタ。血まみれ。狼男に喰われて血はドバドバ出るし(まさに血の海)、肉片や内臓がそこらに飛び散るし。でも、サバイバルアクションの要素が強いせいか、あるいは「肉片」であってほとんど原形をとどめていない描写が多いせいか(要は肉片だから。魚をさばいたって臓物と血くらい出るし)恐怖という感じはあまりない。

「かなりなスプラッタ」というので、もっと気色悪いかと思っていたけど、そうでもなかった。怖くて、ではなくて面白くてドキドキ、って感じでしょう。まあ、DVDでちっちゃい画面で見てるからって事もあるだろうが、夜中にトイレにいけなくなったり(笑)後ろを向くのが怖くなるような、そういう映画ではない。

狼男映画って変身シーンが見せ場のひとつだったりするけど、これには「ソレ」はなし。一度だけの変身も、定番の金色の目と牙までで、後はテーブルの陰に隠れてしまって過程は見せない。けど、そういう映画じゃないわけだし、中途半端な変身シーンに金をかけるくらいならばっさりカットしてしまった方が、何ぼかいい。

状況設定はしっかりしてるし、多少「?」なところはあるけど(ヒロインのセリフの一部とか設定とか)、構成もよく練ってある。テンポもいい。本当に、唯ひたすらに農家に立てこもって戦っているだけなのに、だれない。

「男の子こういうの好きだろ!」って感じの兵士同士の絆(ってのかな)がたっぷり。単純なストーリーに、基本通りのキャラ設定。特に主役の二人クーパー兵士とウェルズ軍曹はモロ直球勝負。音楽も感情的なメロディーでベタにがんがん盛り上げる(笑)…なんだけど、恥ずかしながら、「カッコイー!」と思ってしまいました。

一歩間違えば臭くなったり、アホらしくなっちゃったりするところなんだけど、演技がいいからだろう。軍曹役のショーン・パートウィー(Sean Pertwee)はもちろん貫禄の演技だけど、相手のケヴィン・マクキッド(Kevin McKidd)も、まったく負けてない。

この二人以外の役者も、みんな演技いいっす。有名どころはいないけど。(金がないってのが第一の理由だったんだろうな、と思う) マッチョじゃないところもリアリティーが。でもって、兵士らしさの表れなのか、言葉はかなり下品です。(笑)fuck, piss, bollocks.... fucking なんかは必需接頭語って感じ。
結構な訛りで話していて、聞き取れないところ多々。北部ニューカッスルのタイン川流域あたりの訛りらしい。ジョーディーというのだそうな。(主人公のクーパーはスコットランド出身でそっちのアクセントらしい)

英語のセリフが凄く面白くてカッコいい。ギャグもシリアスなものも。緊迫した状態で、兵士達が冗談を言わずにはいられないブラックなシチュエーションとか。全部判ったわけでは到底ないのですが、私ごときの英語力でわかる部分だけでも楽しめた。これ、字幕はもちろんなんだけど、吹き替えでも、いまいち伝わってこないのが悲しい…。吹き替えの方が大分カバーできてますが、もちろん。

ブラックといえば、軍曹、狼男達と遭遇したしょっぱなで、腹を割かれて腸が飛び出す。(オマケに後で犬に、その飛び出した腸を引っ張られる…笑うよ。この場面は必要だったのだろうか?)部下に慕われ、頼られて、「怖いものなんかないんでしょう?」といわれる軍曹だが、「俺の腸が」 (God... guts... と私には聞こえるのだが…シャレか?)「痛ぇ、畜生!」などと喚きまくり、もう泣きそう。指揮どころじゃない。
UK版
£13.49


イギリス版はオマケが余分に入っている。ジャケットは日本版の方がかっこいい(日本版のジャケットは米国バージョンが元になってるようだ)

コピーは断然英語の方だが
”Six men, Full moon, No chance”

日本版の
「生き残るのは
獣様か、俺様か?」
…ってさあ。


UK版のページへ

国内版
吹き替えは…声があっているかどうかはともかく、字幕よりは内容を伝えているので、一見(聴)の価値はあるかも。"うーん…?"みたいな部分もあったけど

国内版には英語字幕がついていない。…なぜだろう。元版に付いているんだから、そのまま付けときゃいいのに…


それにしても、英米のDVDは難聴者用に英語の字幕がついていて、おかげで私なんかでも見れるんだけど、日本の物はどうなんでしょうね?(少なくともWPのDVDには、日本語字幕はない)

鎮痛剤を飲んだ上にウィスキーをがぶ飲みして泥酔し、それでも手当てのあまりの痛さに「俺を殴って気絶させろ!」 結局気絶させてもらって、その後しばらく薬と酒の効果で熟睡。兵士達が狼男とドンパチやっても目を覚まさない。「親のように部下から慕われて、危機的な状況にも自信に満ちた態度で部下を率いる男」なんだそうだが…出だしは確かにそうだったんだけどね。

面白いんです、面白い映画なんだけど…画面が暗くて何やってるかよく判らないというのは、いろんな所で言われてるけど、本当にわからない。アクションで「ああ動いたから、こうなった」ってのがはっきり判らないと苦しい。まあ、なんとなくはわかるんだが…。予算の関係で暗くしないとぼろが出ちゃうんだったのかなーと邪推。それにしても見えない。何がどうなってるんだ!? 映画館だったらちゃんと見えたのかもだけど。

でもって、これも予算の関係で出るボロなのか、夜の設定だけど窓の外が月明かりじゃなくて、昼間の明かりになっているところがあちこちに。うーむ。結構トホホがあるのです。こういうのって後でデジタル処理で直したりしないのかな? あと、最初に狼男に襲われる場面では(屋外)、太陽こそ出てはいないが、空は暗くなっていない。月も見えない。でも「設定は、満月の夜なんだよーん」ということらしい。「満月に変身する化け物」に襲われてるんだから、夜でないわけないんだよな。

でも、一番弱かったのは狼男。デザインがね。「ショッカー」って誰かが言ってたけど、うん、まあ…。全身が見える以前の方がよかった。たとえ影絵でも(ホントに影絵なんだぜ。ある意味笑える)。直立二足歩行で、腕は人間ぽいのがついているのに(ドアはちゃんとノブをガチャガチャさせて開けられるようだ)、犠牲者の肉を食べるときは狼式。

彼らはあえて大きさとか恐怖感を演出しようとして立たせたらしいけど、私の好み的には四足のでかい犬の方がカッコいいんじゃないかと…。でもって後ろ足で立ち上がると、はるかに見上げてしまうほどのでかさ、とか。(監督は「それじゃあ犬で、狼男じゃない」。…そりゃそうだが) 前かがみの時はそれなりだけど、立つとどうにも脚が気になって。

特に特に、ラスト近く軍曹がたった一人、人狼達に囲まれて襲われるところは、もろに「ショッカー」。ここは動きがまたね…。うふふふふふ…。ここ一番って盛り上げどころなのに。うーん。ただ、半端なCGよりはずっといい、というのはわかる。CGだと、どうしても…なんというか、「重量感」がでないから。

ベートーベンの「月光」ではなくてドビュッシーの「月の光」を使ってるってトコ、なんかオシャレだなーと(別にどうでもいいことだけど)。この曲に遠吠えが重なる場面、好きです。


DVD特典映像


大抵のDVDに入っているものだが、オリジナルと日本版の予告編。…これ、つくりがかなり違う。オリジナルはアクション、スリル、スピード感に重点が置かれているのに対して、日本版はアクションとホラーのほうにウエイトを置いた編集になっている。印象がかなり違うのだ。

で、面白いのがオリジナル版には"thrilling""scary"に並んで"funny"ってなキャッチが入っているのだけど、日本版では(当然?)ばっさりその部分はカット。この映画、確実に "Funny" は魅力のひとつなのに…。かの「俺は便所だよ!」"I'm in the khazi !" のシーンも日本版予告編にはなし。ちなみに私はこの場面が大好きだ。(ただ、正直オリジナルの予告編は怖くない…)


日本版予告編はここでみれるようです。いつまで見られるのかは分からないけど。これはこれで悪くないんですけどね。

My Movies Net;
オリジナル予告編はここで見られます。 しかも盛りだくさんです。^_^

Trailer: 予告編
Features ( Inside Info & CLIP1-4)
Inside Info:メイキング&クルー・キャストインタビュー/ DVDのおまけで付いているやつ。結構摘まんではあるけど、一通り見れます。
CLIP 1-4: クリップ集 軍曹の
All right, button it, Private Parts.の場面があった。すばらしい!(笑)

改めて見直してみるとオリジナル予告編はかなり「笑い」に偏っているのがわかる。「俺は便所」のシーンなんか、わざわざ笑えるように編集しているとしか思えない…。ホラーの予告がこれでいいんだろうか。(ソレを考えると日本の予告編は至極基本に忠実だ)

ちなみにここに(
Video Detictiveアメリカの予告編が。ビデオの予告。ジャンルもきっぱり「ホラー」になっていて編集もかなり怖い。リズムやスピード感で日本のほうがいいと思うけど。

IMDB(The Internet Movie Database)でセリフが紹介されている。他の映画に比べてかなりの量が書き込まれているところを見ると、「セリフが面白い!」ってのはみんな思っているんだろう。残念ながら日本版のDVDには英語の字幕が入っていない。レンタルして見たんだけど…セリフ知りたいからUK版買おうかなあと思案中。

セリフだけ抜き出しても意味判らないだろうけど…ネタばれにならない範囲で、面白い(?)セリフを一寸紹介


Terry: Planning on scoring, Sarge(軍曹)?
(ベッドの中で、ということです)
Spoon: Yea, well mind you don't foul her in the penalty box.
Terry: Aww.
Wells: All right, button it, Private Parts.

よくあるダブルミーニング。Button itで「黙れ」、Private(兵卒)。でもButton it, private parts…すいません、シモネタです。

Sergeant Wells: Just cause its nice and new and shiny doesn't mean its worth shit. Now remember I want that back.
Spoon: What about you Sarge?
Sergeant Wells: Well I'll count, wont I?

日本語訳では「気にするな、新品だが安物だ。でも返せよ」
「新品でピカピカだからって糞(同然の価値)じゃないんだぞ」みたいな感じでしょうかね、英語だと。笑えない? 軍曹の返事は「数えるさ、だろ?」 かっこいいなあ。

We are now up against live, hostile targets. So, if Little Red Riding Hood should show up with a bazooka and a bad attitude, I expect you to chin the bitch.
人狼によって壊滅したSASのキャンプに出くわした時の軍曹のセリフ。緊迫した状況に、まじめな顔して、こういうセリフ…いいなあ。
「バスーカを持って出てきたのが、例え赤頭巾ちゃんだろうと、遠慮はいらんぶっぱなせ!」…ってのが日本語。大意は同じだけど、ちょっと…ね。

[
Cooper tries to push Wells' intestines back into his stomach]
Sergeant Harry Wells: My guts are out Coop!

(俺の)腸が出てんだぞ、クープ!!
Cooper: We'll just put 'em back in then!
元に戻せばいいんです!
Sergeant Harry Wells: They're not gonna fucking fit!
収まるわけねえ!
Cooper: Of course they'll fit, man!
もちろん収まりますって、ほら!
マジ、真剣な、生きるか死ぬかの場面なんだけど字面だけ見ると笑ってしまう…のは私だけか?

Cooper: [Upon learning about the werewolves] I may be nuts but I’m no fruitcake.
Megan: Fine. Stay here and... drink tea!

Nutsってのには馬鹿とかそういう意味が。Fruitcakeは変人奇人。
「俺は馬鹿かしれないが(狼男を信じるほど)狂っちゃいねえ」てなふうになるのかな?…で、「お茶でも飲んでろ」に繋がるわけだけど…日本語だとどう訳しても無理。で、「俺は信じないね」だった。

Cooper: So either we all make a break for it and fight our way clear, or the rest of us keep them occupied while one of us goes for help.
全員で戦って道を切り開くか、残りで奴らをここにひきつけている間に、一人が助けを呼びにいくか。
Joe: And by the time the cavalry get here, they'll have to pick what's left of us from between their fucking teeth.
で、助け(機甲部隊)がついた時には、連中、俺達の残りカスを奴らの歯の間から穿り出さなきゃならねえ、ってことになるだろうよ
これは、別に英語の意味どおりに訳しても問題なかったと思うんだけど、確か違う訳になっていた。

[Sam the dog barks and everyone jumps to their feet]
Joe: Fucking brilliant... we either stay and snuff it, or we all go... and snuff it.
Ryan: Decisions. Decisions.
Joe: Laugh? I nearly died.
Ryan: Who's stopping you?

「最高だね。ここにいてくたばるか、それとも出ていって…くたばるか。」
…なんだけど、犬がほえたって事に引っ掛けて slaughterやkill, dieを使わないでSnuff(クンクンかぐこと)it を使ってるわけで。

Cooper: Where's Spoon?
Sergeant Harry Wells: There is no Spoon.

Witherspoon、通称Spoonという兵士の死を発見するシーン。場所は台所。狼に喰われた彼の残骸が散らばっている。緊迫した場面で笑いは一切ないのだが…。He's gone とかbe killedではなくてThere is no Spoon….直訳すると「(キッチンに)匙はない」。「マトリックス」からだということだけど…見ていないので(!)分からない。今度見てみよう。


「引用」のページを読んでみると、どういうところがファンの印象に残るのか、ってのが分かって面白いと思います。…ただし、かなりの量に上るので、相当ネタばれになりますが。おまけに順番はバラバラ。それから「間違い探し」と「トリビア」もなかなか。…すごいね。



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