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爆裂桃嫁パソコン版


オヤジング・ピーチ其の八

イラスト:まみぴ
文章:直ピー




ピコピコハンマーで殴られ、腑抜けになったサルビア!  「聖シュトラール・スターダスト!」 「聖トルナード・ドリーミング!」 (オリジナルビデオのほうは馴染みが薄いもので済みません。忘れました・・・) 間髪を入れぬリリイとデイジーの攻撃に、ピコピコハンマーを握り締めた怪しい影、 マッチョハン魔ー兄は、ハンマーをほっぽりだしてトンズラこいた。

「なんであいつが? 浄化したはずなのに・・・?」
「考えるのはあとですわ! まだ一人残ってます!!」  

 二人は次に、キッとハンマー弟を睨み付け、じりじりっと間合いをつめる。
「リリイ!デイジー!やっぱり来てくれたのね!」
 感動に涙うるうる、ボケたサルビアを横において、一人友情を噛み締めて喜ぶピーチ。
「くそっ」
 ハンマー弟は、ピコピコを小脇に抱え、勝ち目なしと判断したのか、森の奥へと 逃げ出した。
「待て!」と、跡を追おうとするデイジー。しかしその腕をリリイが 掴んだ。
「深追いは禁物ですわ。まず計画を立てなくては。どのような危険がこの森に 潜んでいるのかわかりませんのよ」
「何いってんだよ!相手の気力が挫けたときがチャンスなんだ!ここで一気に畳み込まないでどうすんだよ!敵に態勢を整えるチャンスをやってどうするんだ!」
「そういうのを猪突猛進というのですわ。匹夫の勇。猪武者。めくら蛇に怖じず・・」
「そこでべらべら喋っててなんとかなるってのかよ?」
「やめてえ!憎しみ合うなんて悲しいわ!」

 かぶりものに筋肉養成ギプスで固まって叫ぶピーチ、そしてボケボケのサルビアを 横に、二人の口論はつづいていく。
「一刻も早くなにか・・」
「何の考えもなく行動しては、私達も頭に花を乗せてしまうのが関の山ですわ。 少しは頭をお使いなさい」
「なんだと・・・」
「馬鹿の一つ覚えのように、行動行動と叫んで突進していっては、それこそ <飛んで火にいる夏の虫>ですわ」
「な・・・」
「何しろ私達は、ももこのお父さまをお助けするだけではなく、大天使にして三年寝太郎のセレーソ様に、お父さま達に愛天使をやって頂くというとんでもない考えを撤回して頂くという大仕事を抱えているのですもの!慎重の上にも慎重を期さなくては。失敗は許されませんわ!」

 リリイのメゾソプラノが機関銃のように鳴り響く合間に、デイジーのアルトが 合いの手をいれ、それにかぶさってピーチのソプラノの叫びが不協和音を醸し出す。 その時、頭上から一条の光が差し込み、美しくも平坦に感情を抑えた優しい声が降っ てきた。
「争っているときではありません」

 はっと息を飲む三人。サルビアは相変わらずボケている。 四人の頭上には美しい光に囲まれて、いつもリモーネのいるポジションに・・・
「愛と美の女神、アフロディーテ様!」
 意外な人物、いや、神様の出現に、三人は声を上げた。サルビアはボケているから 叫ばない。
「大変なことになりました。あなた方愛天使の愛と友情のパワーが弱 まっているのです」
 はっとして決まり悪そうにお互いの顔を見る三人。ピーチは相変わらずギプスをした ままなので、首だけ回してなんとか二人をみた。くどいようだがサルビアはボケて いるので明後日の方に幸せそうな笑顔を向けている。 アフロディーテ様は淡々と語りだした。
「あなたがたの愛のウエ〜ブが消えかけたその瞬間、天使界の宝物殿に納めた 聖サムシングフォーが、再び−−おそらく人間界に−−飛び去ってしまったのです。 そして今や、人間界のみならず、天使界、悪魔界すべてが暗黒の蟹のフォースに 支配されようとしているのです」
「蟹のフォース・・・?」
 聞いたことの無い言葉のはずなのに、なぜか悪寒が三人の体を貫いた。 どこで聞いたのかしら。前世の天使界で? それとも悪魔との戦いのなかで 聞いた言葉? 何となくエッチでお馬鹿でシュールな記憶につながるような 気もするのだが・・・
「今までは聖サムシングフオーによってその力の発露を押さえられていた恐ろしい 力なのです」
 美しい顔を曇らせ、悲痛な面持ちでアフロディーテ様は中空の一点を指し示した。 そこにはアフロディーテ様の力でとある情景が・・・

「いや―――――っ!!」

ピーチの叫びが森にこだました。リリイは言葉を失い、真っ青な顔で、その場に へなへなと崩れ落ちた。
「あいつら・・・危ないとは思っていたけど・・・」
 中空に浮かび上がった、リモーネとようすけの二人の姿を見つめながら、 デイジーはそっとつぶやいた。サルビアはまだボケている。
「聖サムシングフォーの力が失われて、セレーソはまた眠りについてしまいました。 聖サムシングフォーを捜し出さなくてはいけません。この世界が蟹のフォースに 完全に支配されるその前に・・・」

 アフロディーテ様がその腕を優しく振ると、そこから光があふれ、サルビアの体を 取り囲み−−−サルビアが元に戻ったときには、もうアフロディーテ様の姿は 消えていた。                           
続く
                          



直ピーのコメント

たちばなせんせい、むっちゃ繋げ難い絵を描いてくださいましたわね。ふふふ・・・ でも、蟹のフォースの話になったから、きっと筆が進むだろう。それでいいかどうかは 別にして。・・・しかし、長いことブランクがあったので、書き始めのきっかけを掴む まで大分時間を食ってしまったよ。流れが掴めないっていうか。それにしても蟹の フォースはよい!(いや、愛のカニカニ劇場はいい!というべきか?)
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