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爆裂桃嫁パソコン版


オヤジング・ピーチ其の四

イラスト:まみぴ
文章:直ピー

まみぴーのイラスト


「どうしてもお父様を連れていくとおっしゃるのなら、この私を倒してからになさって下さい!!」
 ウラガーノをきっと見据えてゆりは凛凛しくもそう叫んだ。ゆりの気迫に一瞬躊躇したオヤジングピーチ、その時
「ちょっと待ったあ!」
 現われたのはピーチとデイジー。
「みなさん!」援軍に喜ぶゆり。
「夏の日差しがさんさんとふりそそぎ、海も賑わうこのよき日に、ごつい親父が可憐な乙女の衣装を身につけるなんて、ウエディングピーチはとってもご機嫌斜めだわ!」
 そう、ももこにとっては、ママの言い訳よりも、ゆりの父、ひなぎくの父の問題よりも、何よりも切実だったのは自分のファイティングスーツをオヤジングピーチにに着られたことだった。
「おっさん!」デイジーも後を続ける。
「あの衣装は俺のオリジナルなんだからよ、親父になんかに着せないでくれよなあ。なんだっけ、チョサクケンとかってのがあんだろ? 何なら俺が、オヤジレンジャー用の衣装をデザインしてやってもいいぜ」
 ずれてる。趣旨がずれている。軌道を修正しようと、ゆりが口を挟んだ。
「ピーチ、デイジー、そういうことではなくて、お父さま達には戦う義務など…」
「ばかばかしい!」
 吐き捨てるように叫んだ声の主、愛天使サルビアが中空に浮かんで一同を見下ろしていた。
「馬鹿なのはリモーネだけだと思っていたが、ここにも馬鹿がいたのね。こんな阿呆にかつて天使界がてこずったとは我が事ながら情けない!」
「リモーネさまは馬鹿などではありませんわ!一寸ばかりおっとりなさっているだけですわ!!!」
 ヒステリックに食ってかかるゆり。ずれていることは分かっているのだがリモーネの悪口をいわれては黙っているわけには行かない。断じて。決して。少なからずあたっているということが自分にも分かっているだけに……。
 そんなゆりを一蹴して、サルビアは言い放った。
「馬鹿は馬鹿でしょ!」茫然とみているオヤジングピーチの方に目を遣って、
「それより、こっちの馬鹿をやめさせなきゃならないわ!格調高い愛天使の格好でこんな茶番劇、断じて許せない!」
 ふわりと降り立ったサルビアはきっとオヤジングピーチを睨み付けた。
「そこのコスプレ男!汚れた魂を消し去ってやる!」
 剣を抜き放って、オヤジングピーチの前に飛び出すサルビア。あわてたのはピーチとデイジーだ。
「ち、ちょい待てよ!なんぼなんでもあれはようすけの親父だぜ、消しちまっちゃあ…」
「やめてえ、憎しみは何も生まないわ!」
 相変わらずピーチは意味不明のことをいう。
「うるさい!私はピーチの花嫁修業と、悪魔族の名誉の為にこの姿で戦おうというのだ、黙っておれ!」
 馬鹿でも阿呆でも悪魔族名門、最強の男相手にサルビア一人では歯の立ちようもなく、あっけなくふっとばされる。単純直情型のデイジーはそれをみてカッと頭に血が昇った。
「なにしやがる!」
 ピーチ、ゆりが口を挟むまもなく、デイジーはオヤジングピーチに掴み掛かり、手に触れた部分を引き千切った。それがまたなんと、フリルのスカートの、ちょうど真ん中の赤い部分をである。ゆり、ピーチ、スカーレットの、それはそれは色とりどりの悲鳴が響きわたった。
「いやあ!パパ以外の男の人のパンツ見ちゃったあ!ばかデイジー!」
「ももこにとっては将来のパパなんだからいいじゃねえか」
 掴んだ赤いフリルをどうしていいやら分からず持ったままのデイジーが言い訳めいた事をいう。
「ももこはともかく私達は困りますわ!」
「私だって困るもん!ともかくじゃない!!」
「………」
 耳まで真っ赤にして呆然としているサルビア。剣がその手を滑り落ちた。彼女はちょっとオヤジ好みなので三人とは一味違う反応なの…かもしれない。
 オヤジングピーチ、ウラガーノの方も、何しろ誇り高き悪魔なもので、慌てて取り繕う。
「年頃の少女の前でもっこりパンツ丸出しとは恥ずかしい!恥じらいベール!」
「ああ!それは私の技ですわ!」
三人の目の前でウラガーノは恥じらいベールとともに消えてしまった。
「よかった。とにかく助かりましたわ」
父を愛天使にされずにすんだゆりはほっと胸を撫で下ろす。しかし、ひなぎくの、ももこの父は?
「いけない!パパ、五人の悪魔の前に置いてきぼりだったんだわ!」
 思いやりがないわけではないのだが、いかんせん、一度にひとつ以上のことを考えられないももこは、当面の問題が終わってからやっと、今ピンチに立たされている父のことに思いを馳せることができたのだった。
「大変!すぐに助けにいきませんと!」
 ゆりは、目の前で展開することが理解できず、茫然とたたずんでいる父の前で、
「ウエディング・グレイスフルフラワー!」
「ええ?」となっているピーチたちの先に立って、飛び立っていくエンジェル・リリイ。
「いいの?お父さんの前で」と訝るピーチに、にっこり笑って
「幸いにして、とても頭の固い方ですの。愛天使の説明をするよりも、うたた寝をして夢をみていたのだという方をあっさり信じるタイプですから心配ありませんわ」
 スピードを上げて、ももこの家の上空に向かう愛天使たち。その頃、ももこの父、エンジェルサルビア翔一郎は、悪魔に女抱きに抱き抱えられて、まさに攫われていくところだった。
続く
                          



直ピーのコメント


いやあ、どうしてこう登場人物が増えるのでしょう。パパたちだけでも4人いるのにそれに加えて悪魔が5人?デイジーは出てくるし、いやはや、柳葉くんやようすけくんを動かしたいのですが、とてもそこまで手が回りません。ゆりのパパには口をきかせてあげたかったんだけど、とてもとても、でした。それはそうと、今回のイラストのゆりは、ももこの家を訪ねてきて、オヤジングピーチにご対面…ゆりの美意識にとっては、この世に存在することを許せない、というか想像すらつかないおぞましいモノを目のあたりにして…、とまあ、嫌悪感な顔のつもりだったんだけど。やっぱ取り方色々、面白いですね。

まみぴーのコメント


思いもよらないスッゴイ展開にまみぴーはびっくりぎょーてんです。 サルビア・・・もしかしてアナタ・・・、いえ、何でもないです。 何でも・・・。
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